2012 年 53 巻 12 号 p. 875-885
症例は82歳男性.C型肝炎の経過観察中に超音波検査で肝S4に径40 mmの高エコーで一部等エコーの腫瘤を認め,後方エコーの増強と辺縁低エコー帯を伴っていた.Dynamic CTでは,腫瘤は動脈相後期から門脈相にかけて辺縁および内部が濃染され,平衡相ではやや淡い高吸収域であった.MRIではT1強調画像で低信号,T2強調画像で著明な高信号を呈し,血管腫を疑う信号強度であった.Gd-EOB-DTPA造影では,腫瘤は門脈相まで濃染像があり後期相でwash outされ,肝細胞相で均一な低信号域を呈した.造影超音波検査では腫瘤辺縁から流入する腫瘍血管があり,腫瘍内部は中心部は辺縁より遅れて染影され,後血管相では腫瘍内は染影されず肝細胞癌を疑い,肝S4の部分切除術を施行した.組織学的に高分化から中分化型肝細胞癌で,腫瘍内には広範囲に大小不同の多数の類洞様構造(peliotic change)を認めた.本例は腫瘍内に広範にpeliotic changeを認めた肝細胞癌で,診断に造影超音波検査が有用であった.