肝臓
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Wilson病: 2つの病型とその臨床病理像
一宮 洋樋口 知之菱田 直基林 久男坂本 信夫J. Hevia Urrutia
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1990 年 31 巻 5 号 p. 543-549

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抄録

Wilson病の予後を改善すべく,急性発症型と非急性発症型の臨床病理像を検討した.本症の診断には低セルロプラスミン血症と肝組織の高い銅含有とした.
非急性発症型の診断確定時の年齢は9から23歳で,肝機能異常だけの者から,肝代償不全ないし神経症状を呈する患者まで認められた.組織学的には脂肪肝から肝硬変までみられた.血清銅は低下していた.治療後の経過は良好であった.
急性発症型8例のうち6例が女性であった.血清銅は1例を除き上昇した.7例は貧血,黄疸が急速に強まり腎障害を合併して,発病10日から66日目に死亡した.剖検肝は,強い胆汁うっ滞,凝固壊死,乏しい肝細胞再生が特徴であった.この急性発症型は予後不良であるので発症前に診断し治療を開始すべきである.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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