肝臓
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ERCP上慢性膵炎所見を呈した総肝動脈瘤の1例
久保田 佳嗣水野 孝子奥平 勝河郷 忍松本 淳立岩 二朗平松 新鮫島 美子
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キーワード: 総肝動脈瘤, 慢性膵炎
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1983 年 24 巻 1 号 p. 69-74

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抄録

症例は54歳男性,腹部単純レ線写真で,上腹部に卵穀様の石灰化陰影を指摘され来院した.2年前から糖尿病のため加療中であるが,腹部外傷,種々の消化器症状をきたした既往はない.腹部超音波・CT検査で膵頭部下後方に石灰化の著明な腫瘤を認め,腹腔動脈造影でこの腫瘤は,celiacomesenteric truncより上腸間膜動脈分枝直後の総肝動脈に生じた動脈瘤と診断した.ERCP所見はこの動脈瘤のために,主膵管が膵頭部で下後方より圧排・偏位され,拡張・壁不整・小のう胞があり,中等度以上の慢性膵炎所見を呈していた.動脈瘤切除目的で手術を行ったが,癒着がつよく部分切除と総肝動脈結紮を実施した.術後,肝はceliacomesenteric truncより上腸間膜動脈,胃十二指腸動脈を通じ固有肝動脈からの側副路で養われており,ERCPでは主膵管の異常はやや改善されている所見をえた.総肝動脈動脈瘤は稀なもので,本邦では本例を含め10例の報告がある.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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