肝臓
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肝性昏睡を来した脾動静脈瘻の1治験例
藤井 秀樹真下 六郎許 国文若城 茂太朗磯和 剛平松本 由朗
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1983 年 24 巻 3 号 p. 331-338

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抄録

特発性門脈圧亢進症に対する外科的治療後,脾動静脈瘻を形成し肝性脳症を来した1例を経験した.症例は32歳の女性で,pancytopeniaとsplenomegalyを主訴とし,検査の結果,特発性門脈圧亢進症と診断し,食道離断術,摘脾,傍食道胃上部血行郭清術を施行した.術後3カ月に肝性昏睡となり,腹腔動脈造影にて脾動静脈瘻が明らかとなった.膵体尾部合併切除により,動静脈瘻を切除し得た.脾動静脈瘻は稀れな病態で,脾動脈瘤の脾静脈への破裂が主な原因と考えられ,本例でも初回手術前に多発性の動脈瘤が認められ,その破裂により発生したと考えられた.また,本症例は肝性脳症を呈したが,肝性脳症を来した例は文献的にも報告がない.本例の肝性脳症は,初回手術により,上行性の門脈副血行路が遮断されたために,上下腸間膜静脈が主たる側副血行路となり,腸管由来のアンモニアが直接大循環系に流入したために発生したと考えられた.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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