肝臓
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蛋白同化ホルモン剤による再生不良性貧血治療中に発生したと思われる肝細胞腺腫の1例
太田 裕彦志方 俊夫藤生 道子白木 和夫
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1977 年 18 巻 12 号 p. 958-964

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抄録

症例は4歳3ヵ月の女児で再生不良性貧血と診断.約2年4ヵ月にわたり蛋白同化ホルモン剤(Winstrol, Enarmon, Enarmon depot)を投与したが,糖尿病性昏睡におちいり死亡した.剖検の結果,肝右葉に2.0×2.0×1.5cm大の肝細胞腺腫がみとめられた.非腫瘍部には著明なジデローシスと軽度の胆汁うっ滞がみられたが,ウイルス性肝炎の所見はなかった.蛋白同化ホルモン剤によるこのような肝腫瘤は今日まで16例報告されている.一方,経口避妊薬による同様の肝腫瘤が最近多数報告され問題になっている.両薬剤はC17アルキル化ステロイドという共通の化学構造をもち,この化学構造自体に腫瘤発現性があると推定されている.これまで報告された両薬剤による腫瘤の病理組織像は非常に類似しているにもかかわらず,その性状,用語は報告者によりまちまちである.早急な診断基準の確立と対策が望まれる.

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© 社団法人 日本肝臓学会
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