1975 年 16 巻 8 号 p. 524-536
N〔N-(4-carboxyphenyl) glycyl〕aminoacetonitrile (CAAN)について小葉改築傾向の少ない慢性肝炎(活動型)75例を対象に3ヵ月間二重盲検試験を行ない次の成績を得た.1) CAAN群では理学的所見の改善が認められた.(p<0-05). 2) 自覚症状の改善は認められなかった.3) 肝機能検査の障害度による評価ではγ-GTPに有意な改善が認められた(p<0.01). 4) 7種の肝機能検査の有効率を二元配置の分散分析を行った結果,投薬後10週(p<0.05), 12週目(p<0.10)にそれぞれ有意差及び傾向差を認めた.5) 組織学的所見では投薬前後の障害度の差から改善率を求めたとき好酸性変性(p<0.05)クッパー星細胞の動員(p<0.10)を含む肝実質細胞の障害に改善を認めた.6) 副作用は4例に軽度の消化器症状が観察かれたが,投薬を中止する程ではなかった.以上の成績を総合するとCAANは慢性肝炎(活動型)に対して本疾患の性質上徐々ではあるが,肝小葉実質内の変化を改善させるものと考えられた.