2016 年 31 巻 4 号 p. 320-330
近年、患者自身の免疫能を向上させ、抗がん治療を進めるアプローチが盛んになりつつある。患者自身の細胞や免疫システムを活性化するタンパク質などを利用するこの治療法は、これまでの化学療法に比べて副作用が小さく、高いQOLが期待されている。しかしながら工程の繁雑さ、コスト、安定性など、問題も少なくなく、免疫関連の副作用も明らかになりつつある。このような問題点を踏まえ、筆者らはポリカチオン-PEG-ポリカチオンをベースにポリイオンコンプレックス型インジェクタブルゲルによる局所タンパク質デリバリーシステムを開発し、がん免疫治療に適用した。また、アルギニン放出ナノ粒子を新たに設計し、タンパク質を使わないマクロファージ活性化によるがん治療を行った。これらに関するレドックスナノメディシンの効果を紹介する。