獣医疫学雑誌
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原著
隠れマルコフモデルを用いた牛のサルモネラ保菌陰転率と第一胃発酵状態の関連の評価
榊原 伸一
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2020 年 24 巻 1 号 p. 11-20

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抄録

サルモネラに感染した搾乳牛は,時としてサルモネラを長期間保菌し,大きな経済損失が発生する。今回,サルモネラの長期間保菌要因の一つと考えられる第一胃発酵状態について,牛のサルモネラ保菌陰転率(陰転率)との関連を隠れマルコフモデルを用いて評価した。調査農場はサルモネラ症が発生した一酪農場で,搾乳牛21頭の糞便培養検査が対策終了までの約1年間に約2週間間隔で23回実施された。第一胃発酵状態は乳脂肪率/乳タンパク質率比(FPR)により推測した。FPR≧1.1かつ≦1.5を正常(OC),発酵不足であるFPR>1.5を栄養不足(NEB),発酵過剰であるFPR<1.1をルーメンアシドーシス(RA)とした。OCの牛に対するNEB及びRAの牛の陰転率のオッズ比は,それぞれ0.0141(95%信用区間:1.08×10-26,2.75)及び0.0429(95%信用区間:2.00×10-14,0.628)と推定された。今回の調査から,第一胃発酵状態が異常である牛はサルモネラが排除されにくい可能性があると考えられた。

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