日本レーザー医学会誌
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乳癌に対するPDTの基礎的研究と臨床例の検討
西脇 由朗脇 慎治内村 正幸河野 栄治平野 達
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1999 年 20 巻 2 号 p. 113-119

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抄録

マウスのSMT-F乳癌を用いてPDTの基礎的な研究を行った. Photofrin II(DHE, 5mg/kg)とアルゴンダイレーザー(630nm)によるPDTを行いpower densityと energy density の条件によるが, 腫瘍に深さ5mmから10mmの壊死を起こすことが判明した. これをもとに, 1996年2月73歳の女性で以前に各種の治療(1988年に根治的乳房切断術施行)を受けた局所再発乳癌の患者にPDTを応用した. PDTは, DHEを2mg/kg静注し, 48時閤後にエキシマダイレーザー(630nm)を8mJ/pulse, 40Hz, 134J/cm2の条件で照射した. レーザーの照射外にPDT施行3ヵ月半後に新しく腫瘍結節を認めた. しかし, 患者が1997年10月に乳癌で死亡するまで1年10ヶ月の間PDTで治療したところには腫瘍の再増殖は認めなかった. 再発乳癌の患者に PDT を用いる場合, いくつかの問題点が挙げられた. 1) レーザーの照射条件が確立していないこと, 2) 体表の腫瘍の正確な厚さ診断ができないこと, 3) 表在腫瘍のPDTに保険の適応がないこと, 4) Photofrin-PDT には光制限が長期間必要であること, そして 5) 臨床においてPDT効果を早期に評価できるよい手法がないことである.

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