紙パ技協誌
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総説・資料
担体流動式生物処理法による廃水処理能力の向上
―PVAスポンジ微生物固定化担体Y-CUBE®
野町 精一藤田 幸裕
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2019 年 73 巻 12 号 p. 1214-1218

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抄録

昨今,製紙を含む産業界は,廃水処理設備の老朽化及び廃水規制強化への対応を,継続的に事業展開を図っていくための喫緊の課題として求められており,廃水処理設備の処理能力を安定的に向上させることが必要とされている。対策実行の障壁となりうる設備改修費などの投下費用の増大をおさえる手法として,既存設備を生かし,従来のスポンジ担体と比較して高い機能を併せ持つPVA(ポリビニルアルコール)スポンジ担体を用いることが有効な手段と考えられる。

極めて親水性が高いPVA樹脂を独自の製法によりスポンジに成形したY–CUBE®は,その親水性の高さにより,処理槽投入後速やかに浸水し短期間で完全に旋回させることが可能で,この旋回性の良さは速やかな処理性能発揮に直結する。Y–CUBE®は他素材のスポンジ担体と比較して耐摩耗性に優れており,耐久性の高さは処理能力の維持につながる他,追加投入の低減によるランニングコスト削減にも大きく寄与する。Y–CUBE®は,その特殊な多孔質構造により微生物が付着しやすく,細菌類(バクテリア)が優先的に付着し,従来から使用中のウレタン系スポンジ担体よりも少ない充填量で同等以上の処理能力を有することが確認されている。また,糸状細菌による担体の表面閉塞現象が起こることがあるが,Y–CUBE®に関してはその発生現象がみられないという,廃水処理管理上有利と考えられる特徴も確認されている。今後我々がもとより有している気孔径のコントロール技術,或いは他材との複合化技術などによって,更なる高機能化を追求することを目指している。

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