2018 年 72 巻 12 号 p. 1385-1392
枚葉オフセット印刷特有の印刷トラブルとしてグロスゴーストがある。これは後刷り面において,先刷り画面像に起因する光沢ムラの様な模様が現れる現象である。グロスゴーストは印刷物の美観を著しく損ない,商品価値を低下させてしまう。グロスゴーストが発生した場合には刷り直しをする場合が多く,ベタ画像部面積の大きい方を先に印刷したり,先刷りしてから後刷りまでの時間を出来るだけとるなどの対応をしているのが現状である。
グロスゴーストに関しては,その発生要因と併せ,何故ゴースト部がグロス調になったりマット調になったりするのかなど,詳細なメカニズムは不明な点が多い。本研究では,先刷り及び後刷りした印刷面でそれぞれ何が起きているのか調査し,また,そこに用紙がどのように影響しているのか検討を行った。
本研究により,グロスゴースト発生に関しては,先刷り面と後刷り面が接触する時の環境が重要であることが確認された。先刷りしてから後刷りを実施するまでの時間が大きく影響し,これは先刷り面から発生するアルデヒド類中心のガス発生量と相関する,という知見が得られた。また,後刷り面の経時Ra値変動の挙動から,グロスゴーストが目立つ/目立たない(発生しない),あるいは発生する際にグロス調/マット調になるという機構を推定することが出来た。結論として,印刷面の経時Ra値変動が小さい印刷用紙がグロスゴースト発生抑制に有利であることが確認された。今後はこのような用紙設計のノウハウ構築が課題となる。さらにSCE方式による分光測色により,グロスゴースト発生強度の数値化が可能という結果も得られ,今後の検討に対して有効な評価方法が確立出来た。