バイオエタノール生産の重要な一段である酵素糖化について,シリングアルデヒドとバニリン(S/V)比で示される残留リグニン構造が糖化速度におよぼす影響を調べた。アルカリ性サルファイト・アントラキノン(ASAQ)またはソーダ・AQ蒸解でサトウキビバガス(SB)とアブラヤシ幹(OPT)の脱リグニンを行い,得られたパルプを酵素糖化処理した。ニトロベンゼン酸化法によってパルプの残留リグニンのS/V比を定量した。SBの脱リグニンについては,AS-AQ法はソーダ・AQ法よりも適していた。同一の蒸解および糖化の条件では,SBパルプはOPTパルプよりもグルコース遊離量が大きかった。カッパー価(残留リグニン量)の減少は明らかに糖化速度を向上させた。同一カッパー価(20)のAS-AQパルプの比較では,S/V比がより小さい(0.68)SBパルプで大きい糖化速度(0.0327)が認められ,OPTパルプのS/V比は2.56で糖化速度は0.0252であった。SBとOPTの比較から,AQ-AQ蒸解パルプの残留リグニンのシリンギル核が多いと糖化速度が遅くなることが見出された。