紙パ技協誌
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総説・資料
日本の製紙産業の技術開発史:第二次世界大戦以後
第3回 日本における広葉樹利用
飯田 清昭
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2017 年 71 巻 6 号 p. 649-660

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抄録

1950年代までのパルプ原料は針葉樹で,それが不足していた日本では広葉樹の利用がどうしても必要であった。

その頃,最大の製紙国でありながら,良質の針葉樹の不足するアメリカが広葉樹の利用を研究し,SCP次いでCGPを開発した。針葉樹不足に悩む日本は即座にそれらを導入し,CGPを新聞用紙に30%配合するまでに発展させた。これには高馬力のリファイナーの開発(アメリカとスエーデン)が要であった。

丁度その頃から日本経済が急成長しはじめ,そのエネルギーとして輸入石油次いで石炭が使用され,それまで薪炭材として使用されていた広葉樹がパルプ材に転用できたことが後押しした。

その広葉樹に着目し,そのクラフトパルプを漂白して上質紙を製造することが試みられ,優れた品質の上質紙が得られること,上質紙の需要が急増しつつあったことから,日本の製紙会社は一斉にLBKPの上質紙を生産しだした。それを支えるように,二酸化塩素による漂白,連続蒸解釜の開発,サイズプレスによる導管トラブル対策等の技術開発が組み合わさり,LBKPの上質紙が日本発の世界標準となった。

一方,日本では需要増を満たすだけの原木が確保できず,チップ専用船による輸入が始まる。この輸入チップは日本の製紙産業の構造を大きく替えるものであった。それについては次回で考察する。

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