2017 年 71 巻 5 号 p. 532-538
製紙産業は,20世紀初頭から,新しく生まれた大きな産業であるセルロース系化学繊維に,原料である溶解パルプ(dissolving pulp)を供給してきた。その技術開発過程で,製紙産業はいろいろとかかわっていた。また,そこから,高分子の概念が生まれ,合成繊維,石油化学等の多くの産業が誕生した。
1920年にCourtlaudの独占が切れると,世界中でレーヨンの生産が始まる。日本でもレーヨン産業がスタートし,1937年には世界の28%を占めるレーヨン生産国になった。それに原料を供給する形でパルプの生産が始まり,国内材(赤松,ブナ,杉)の利用技術を開発した。
戦後はまたゼロからのスタートとなったが,いち早く生産を回復した。しかし,その頃より,合成繊維が急速に台頭し,国内レーヨンメーカーの撤退から,国内の溶解パルプメーカーも製紙に転向することになった。