洋紙の需要減による国内の古紙発生量の減少,並びに中国や東南アジア地域への古紙輸出増加により,再生紙の原料となる古紙は不足している。一方,印刷技術の発展により印刷物は多様化が進んでおり,特にUV照射によりインキを硬化させるUVインキ印刷は,環境問題(溶剤フリー)や短納期化への対応等の観点から,商業印刷の分野でも普及しはじめている。今回,各種上物系古紙サンプルについて,ダートの発生しやすさ(リサイクル性)をラボ高濃度離解機及びPFIミルを用いて評価した結果,従来UVインキ印刷物のほか,UVニスやポリスチレンのオーバーコート品のリサイクル性が大きく劣っていることを確認した。省エネUVインキ印刷物は従来UVインキ印刷物に比べリサイクル性は良好であったが,印刷時のUV照射条件に大きく影響されることがわかった。また,これら印刷物について,印刷面のIRスペクトルの違いに着目し,従来法よりも精度よくリサイクル性を予測できるATR―IRを用いた簡易判別法を開発した。この方法により,工場で古紙ベールに含まれる印刷物のリサイクル性を効率よく判別できることから,脱墨パルプ製造時のダート低減,品質向上につながると期待される。UVインキ印刷物を含めた各種古紙のリサイクル率向上に向け,業界を挙げて技術開発に取り組んでいくことが,今後ますます重要になると考えられる。