紙パ技協誌
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総説・資料
製紙プロセスから排水処理工程までの臭気の問題とその対策
小島 英順
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2015 年 69 巻 9 号 p. 969-973

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抄録

製紙工場では抄紙プロセスから排水処理において,その水質に起因する臭気が発生する。臭気対策には消臭剤が使われるが,許容されるコストが限られるなか,より効率的な薬剤適用が求められる。また,臭気物質は工場の安定操業や生産性にまで悪影響を及ぼす深刻な原因物質である。このような視点から臭気対策の最適化について述べるとともに,単なる悪臭対策ではない工場にとってメリットが得られる対策を紹介する。
抄紙プロセスでは,原料中で生成した硫化水素が貯留タンクやマシンで放散するが,抄紙に悪影響のない消臭剤の適用が重要であり,その添加量は酸化還元電位を指標に最適化できる。また,無機系殺菌剤を用いてパルプスラリーの微生物コントロールを行うと,臭気発生の抑制に加え,抄紙薬剤の使用量削減や欠点減少という生産性向上のメリットが得られる。一方,排水処理工程では,嫌気化抑制剤の適用により活性汚泥中の硫化水素を除去でき,曝気槽での臭気発生の抑制に加え,排水処理能力の改善につながる。さらに,制御室に存在する低濃度硫化水素は,高性能触媒活性炭カートリッジを充てんした腐食環境改善装置により素早く除去でき,腐食による機器故障の抑制が可能である。

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© 2015 紙パルプ技術協会
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