紙パ技協誌
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新入社員歓迎号
植林事業におけるバイオマーカーの活用
西窪 伸之
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2013 年 67 巻 4 号 p. 388-390

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抄録

当社は,海外植林事業を拡大しており,植林木をチップ原料としてだけではなく,製材品,合板など様々な用途での使用を行なっている。植林地が存在する国,地域では気候や土壌が異なり,各地に各々適した樹種,個体の選抜を行なっている。選抜された成長,材質優良木はクローン植林へと展開し,生産量と材品質の向上を図っている。安定した生産性,材の品質を維持させるには,選抜された優良木を徹底管理する必要があり,また,違法持ち出しによる侵害対策も必要である。その対策として,遺伝子レベルでの個体間差を利用し個体識別を行なうのが最も確実な手法である。
ユーカリゲノムDNAの解読結果は2010年に公表された(Eucalyptus grandis)。また,遺伝子の塩基配列を大量解析する技術(次世代シーケンサー)の進歩と低価格化により,個体レベルの遺伝子比較ができるようになった。この技術を利用し,Eucalyptus pellitaについて18個体分の木部発現遺伝子(RNA)の大量解析と比較を行い,樹種内で共通して存在するSNP(一塩基の違いがある部分)を見出した。それらSNPの中から17種類のSNPを個体識別用マーカーとして選び,TOF―MSを用いたユーカリ個体識別方法を開発した。この手法により,大量の個体を迅速に安く,更に従来法より確実に個体識別する事が可能となり,植林地の選抜優良木の徹底管理が可能となった。

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© 2013 紙パルプ技術協会
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