木材パルプ繊維に乾湿繰返しのリサイクル処理を施すと,不可逆的な変質が生じ,シートの物理的性質が低下する。パルプのリサイクル性を客観的に評価し,リサイクル性の優れた個体を選抜,植林し,製紙用原料として用いることができれば,全体としてフレッシュパルプの使用量を減少させることができる。
Eucalyptus globules及び3種のアカシア材から調製したクラフトパルプに,乾湿繰返し処理を施し,パルプのリサイクル性に影響を及ぼす因子についてパルプの繊維形態及び膨潤性を中心に検討し,シート物性との関係を述べた。リサイクル処理によるシート物性の変化は樹種間,個体間において相違があること,アカシア・ハイブリッド材(Acacia mangium×Acacia auriculiformis)の中にはAcacia mangium,Acacia auriculiformisと同等以上の高い引張強さを有する個体があること,リサイクルによるシートの引張強さの低下現象が指数関数による回帰式で表されること,回帰式によって求められるリサイクル時の引張強さの漸近値がシート密度,パルプの膨潤性,繊維形態と良好な相関を有することなどを明らかにした。