新しい方法で実験室的に調製した高粘度ケナフ靭皮パルプ試料をFT-IR分光法, X線回折法, ならびにCP/MAS13C NMR分光法で比較分析した。使用した高粘度ケナフ靭皮パルプは3種類の異なる方法で調製したもの (A, B, C) で, 銅エチレンジアミン粘度 (CED) は順に109, 63および102 cPであった。
FT-IRスペクトルでは, 基本的には同様な分子鎖構造を示したが, 平均水素結合度, エーテル結合比, 結晶化度指数はCED粘度の順と一致した傾向にあった。X線回折図とCP/MAS 13 C NMRスペクトルでは, B法のパルプで, (110) 面間にA法とC法では認められない残留リグニンの存在が示された。FT-IR, X線, CP/MAS 13 C NMRいずれでもA法のパルプが最も高い結晶化度指数を示し, 次いでC法, B法の順であった。粘度とこれらの3種の測定で計算した結晶化度指数との間には高い相関性 (R>0.9) が認められ, これらのパルプの結晶化度はCED粘度と比例関係にあることが示唆された。