2015 年 51 巻 1 号 p. 1-9
本研究では、肉牛糞尿の堆肥化過程における微生物群集の挙動解明に資するRNA回収技術の確立を試みた。RNAは非常に分解されやすいため、採取した試料中のRNAを分解させずに保存することが重要である。そこで、3種類の市販のRNA安定化試薬に堆肥化初期の試料を浸漬させ、4℃で一定期間保存後にRNAを回収し、その収量を比較した結果、RNAlater RNA Stabilization Reagentが最も短時間でRNAを安定化でき、14日までRNA安定化を維持できることが明らかになった。また、保存後の試料からのRNA抽出方法を決定するため、ビーズによる細胞破砕工程を含む3種類の市販の土壌RNA抽出キットを用い、堆肥化初期の試料からのRNAの収量と純度を比較した。その結果、RNA回収にはフェノール・クロロホルム抽出工程が必須であり、フェノール・クロロホルム抽出をビーズによる細胞破砕と別に行うFastRNA Pro Soil-Direct kitが最も有効であることが明らかになった。最適化したRNA回収法を用いて堆肥化初期の試料中における活性を有する微生物群の解析を行ったところ、7日間までの試料保存では同等の解析結果を得られることが明らかになり、本研究で確立したRNA回収法が堆肥化過程における活性を有する微生物群の挙動解析に有効であることが示唆された。