日本水処理生物学会誌
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パーラー排水およびパドック流出水の浄化処理を行う多段鉛直流型人工湿地のスタートアップ性能
中野 和典千木良 純貴宋 海亮矢野 篤男丸尾 知佳子野村 宗弘相川 良雄西村 修
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2011 年 47 巻 3 号 p. 103-110

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抄録

本研究では,酪農排水および不定期に発生するパドック流出水の浄化処理を行う多段鉛直流型人工湿地の冬季を含む8ヶ月間のスタートアップ期における浄化性能に対する多段処理,植栽および水位条件の貢献性について検討を行った.パドック流出水の発生は季節的な雨量に依存しており,流入汚濁負荷は大きく変動していた.それにも関わらず効果的な浄化処理が行われ,BOD,SS,総ケルダール窒素および総リンに対する8ヶ月間の平均除去率は,それぞれ94.6, 87.3, 83.6 および89.9%であった.一方,総窒素の除去性能は安定せず,平均除去率は65.5%であった.これらの水質項目の中で多段処理の貢献性が特に大きく現れたのはSSであった.設定した3つの人工湿地条件の中で最も浄化性能に優れていたのは不飽和かつ無植栽の条件であり,スタートアップ期におけるヨシ根圏が十分に成熟していないことが原因として考えられた.特にスタートアップ年の冬季における浄化性能の安定性に対しては,植栽がマイナスの効果を生み出している可能性が示された.

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© 2011 日本水処理生物学会
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