日本水処理生物学会誌
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生活排水を対象とした揺動床法と活性汚泥法との処理能力の比較解析
成 英俊渡辺 佑輔喬 森小山 登一郎古川 憲治
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2006 年 42 巻 3 号 p. 129-137

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抄録

従来の活性汚泥法には、設置面積が大きく処理コストが高くつくことや余剰汚泥の発生量が多いことなどの運転上の問題が依然として存在する。この問題を解決するために、アクリル繊維製の微生物担体(バイオフリンジ)を用いた揺動床による処理が新しく考案された。本研究では一般的な生活排水レベルの汚水を対象としたラボスケールの実験で揺動床による処理(以下BFと呼ぶ)と従来の活性汚泥法による処理(以下CASと呼ぶ)を同条件下で平行して行い、汚濁成分の処理能力や余剰汚泥生成量を比較検討した。実験は2つの条件で行い、RUNⅠではBOD容積負荷0.5 kg-BOD/m3/d(HRT 7.2時間)、RUNⅡではBOD容積負荷1.0kg-BOD/m3/d(HRT 3.6時間)で実験した。その結果、BFでより安定した汚濁物質の処理結果を得ることができ、RUNⅠでの平均COD除去率は92%であった。一方CASでの平均COD除去率は86%であった。RUNⅡでの平均COD除去率はBFで90%、CASで83%であった。さらに、CAS、BFともに負荷変動時においても安定した硝化反応を達成できたが、BFではRUNⅡにおいて平均窒素除去率44%という、CASの34%と比較して高い窒素除去率を確認することができた。流入流量を増加して容積負荷を上昇させたRUNⅡにおいては、CASで汚泥の流出が確認されたが、BFでは高活性の汚泥を安定して処理系内に維持することができた。みかけの汚泥生成量は、RUNⅠではCASで0.12 kg-MLSS/kg-CODremoved、一方BFでは0.08 kg-MLSS/kg-CODremovedであり、RUNⅡではCASで0.22 kg-MLSS/kg-CODremoved、一方BFでは0.12 kg-MLSS/kg-CODremovedであった。BFでは活性汚泥内に非常に多くの原生動物や後生動物を確認することができ、このことが余剰汚泥の削減につながったと推察された。

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© 2006 日本水処理生物学会
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