日本水処理生物学会誌
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水耕生物ろ過法における水面積負荷及び収穫の浄化機能に及ぼす影響と隔離水界を用いた浄化効果の評価
李 先寧稲石 高雄中里 広幸野村 宗弘西村 修稲森 悠平須藤 隆一
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2005 年 41 巻 2 号 p. 61-71

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抄録

本研究では、水耕生物ろ過法における水量負荷条件が水質浄化能に及ぼす影響、植物の刈り取り (収穫) の栄養塩類の除去に及ぼす影響について検討を行った。また、隔離水界を用いて水耕生物ろ過法による浄化が対象水域の水質および生態系に及ぼす影響を解析し、浄化能力を総合的に評価した。
クレソン植栽水路において冬季を除いてT-Nが平均0.98 g・m-2・d-1、T-Pが平均0.10g・m-2・d-1の除去速度が得られた。最適水面積負荷を検討した結果、除去速度はT-Nが水面積負荷5 m3・m-2・d-1に、T-PやChl. aなどが4 m3・m-2・d-1に設定した場合に最大となった。一方、除去率は低負荷条件に比べ、高負荷条件で低下がみられ、目的に応じて水面積負荷の最適化を図る必要があることが明らかになった。刈り取りの処理に及ぼす影響については、適切な刈り取りを行うことで処理水質に悪影響を及ぼさないことがわかった。クレソン植栽水路を用いた処理により隔離水界中のT-NおよびT-P濃度は低く、25日目においてChl.a濃度は41.1 μg・l -1を示し、対照系の隔離水界の77.4 μg・l -1と比べて1.9倍の差が認められた。特にMicrocystis sp. 除去については、10日目においては処理系水界および対照系水界のMicrocystis sp. の個体密度はそれぞれ1.1 × 103 N・ml -1と29 × 103 N・ml -1であった。本浄化システムにおいて栄養塩類を除去できるのみならず、藻類を量的に制御可能であり、さらに質的制御としての有毒藻類Microcystis sp. の除去や増殖抑制に極めて効果的であり、健全な生態系の維持にも効果があることがわかった。

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© 2005 日本水処理生物学会
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