日本畜産学会報
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朝または夕の産乳能力の検定記録から1日当たりの乳量と乳成分量を推定するための要因
河原 孝吉曽我部 道彦斉藤 祐介鈴木 三義
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2000 年 71 巻 8 号 p. 235-244

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抄録

本分析の目的は,朝夕片方の検定記録から日乳量と日乳成分量(1日当たりの乳量と乳成分量)を推定するための補正係数を推定することである.記録としては,北海道酪農検定検査協会が集積した1987年10月から1997年9月までの間に夕朝の順で検定を実施したホルスタインの2回搾乳記録を使用した.乳量に関する分析には7,225牛群927,342頭の雌牛から得られた23,290,509記録,乳成分量に関しては2,083牛群77,457頭の雌牛から得られた606,112記録を使用した.日乳量を推定する係数は,30分ごとの搾乳間隔別に,朝夕片方の乳量の1日当たり乳量に占める比率の逆数として推定した.この日乳量の推定値と実測値の誤差は,搾乳日数または朝夕片方の乳量に関する各共変量によって泌乳ステージによる影響を補正した.日乳成分量は,乳量と同様な方法で推定した,朝の乳量の日乳量に占める比率は,540から899分までの夜間の搾乳間隔に対し,0.424から0.582まで直線的上昇,夕の乳量の比率は,0.589から0.426まで減少傾向を示した.乳タンパク質量,乳糖量および無脂固形分量の各比率は,搾乳間隔に対し,乳量の比率と類似した傾向を示した.一方,乳脂量の比率は,搾乳間隔に対し,朝の検定に関する上昇と夕の検定に関する減少傾向が緩慢であり,乳量の比率と異なる変化が認められた.泌乳ステージによる日乳量の補正は,搾乳日数よりも朝夕片方の乳量に関する共変量の方が有効であった.朝夕片方の乳成分量に関する共変量は,乳脂量以外,搾乳間隔に対し,乳量に関する共変量と連動して同様の変化を示した.このことは,乳タンパク質率,乳糖率および無脂固形分率が搾乳間隔や泌乳ステージの影響を受けないことを示唆している.したがって,日乳タンパク質量,日乳糖量および日無脂固形分量は,推定された日乳量と朝夕片方の乳成分率との積から推定できることが判明した.一方,朝夕片方の乳量と乳脂量から各々日乳量と日乳脂量を推定する場合は,搾乳間隔と泌乳ステージを考慮した補正をすべきものと推察された.

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