日本畜産学会報
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牛肉の抗疲労効果について
若松 純一長尾 哲二沼田 正寛中村 豊郎藤巻 正生
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1997 年 68 巻 6 号 p. 579-586

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抄録

食肉,特に牛肉は活力•精力の増強のイメージが強いため,疲労の低減や疲労回復といった特有の生体調節機能を有すると期待される.今回我々は,マウスを用いた運動負荷実験において,牛肉が疲労を低減するかどうかについて調査した.いずれの群においても実験期間中の体重の推移に違いはみられなかった.また,飼料摂取量においても,群間で有意差はみられなかった.さらに,一般状態に異常が認められなかったことから,牛肉,牛脂の長期連続摂取は成熟マウスの生育に悪影響を及ぼさないことがわかった.牛肉+牛脂群において,カゼイン+植物油群と比較し,遊泳時間に有意な延長がみられた(p<0.05).カゼイン+牛脂群の遊泳時間にも延長がみられたが,カゼイン+植物油群との有意差は確認されなかった.牛肉+牛脂群およびカゼイン+牛脂群は,懸垂持続試験において強制泳3分後の懸垂持続時間に有意な延長がみられた(p<0.05).強制遊泳30分後では,牛肉+牛脂群のみがカゼイン+植物油群と比較して懸垂持続時間に有意な延長がみられた(p<0.05).これらの結果から,牛肉,特に赤肉部分に抗疲労効果があることが示唆された.カゼインを供試したマウスの血漿中のグルコースおよび乳酸含量は,運動負荷前と比較して大幅に低下したが(p<0.05),牛肉+牛脂を供試したマウスでは負荷前と比べ,血糖はほぼ同等,乳酸については若干の増加がみられた.牛肉+牛脂群におけるこれらの血液成分の変化は,カゼイン+植物油群と比較して小さいものとなった.

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