日本畜産学会報
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アニマルモデルBLUP法による枝肉形質に関する育種価予測値の正確度の近似値
向井 文雄岡西 剛
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1993 年 64 巻 2 号 p. 140-148

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抄録

家畜の遺伝的評価法としてアニマルモデルによるBLUP法が世界的に広く利用され,評価個体数の制約も種々のアルゴリズムの開発によって緩和され,さらに育種価予測値の正確度を算出する近似法も提唱されている.黒毛和種のように,枝肉形質が改良目標として重視され,比較的小さい牛群単位で純粋種を主体とした肉牛生産が行なわれている品種では,近交係数や取り上げるべき母数効果の数も多岐にわたる.このような条件を考慮した育種価予測植の正確度の近似値を算出する簡便な方法を示し,一般の枝肉市場で収集された枝肉記録を用いて,正確度の理論値と近似値を比較し,近似法の有用性を検討した,分析対象とした形質は遺伝率が0.825から0.302の範囲にある枝肉6形質である.正確度の理論値の近似値への1次回帰式の寄与率は,いずれの形質でも0.99以上であり,精度の高い近似値が得られた.また,近似値はいずれの形質においても過大評価の傾向にあったが,種雄牛では,10頭以上の去勢後代を生産しておれば,正確度は0.8以上で,偏りの程度は5~6%程度となった.繁殖雌牛では両親が明らかで,少なくとも1頭の去勢後代を持てば,0.5程度の正確度で,偏りの程度も4%程度になり,正確度の近似値が有効に利用できる.また計画交配産子の正確度は,両親の育種価予測値の正確度に依存し,高い正確度を持つ両親の産子であれば0.5以上となり,能力検定による選抜の正確度に匹敵する正確度が得られ,今後の交配計画の樹立に有効に活用できることが期待できる.

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