日本畜産学会報
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ヤギ赤血球抗原に対するモノクローナル抗体の作製とその有効性
林 智人天野 卓安尾 美年子早坂 勇太郎
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1990 年 61 巻 2 号 p. 139-144

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抄録

ヤギ赤血球の同種および種属抗原を詳細に分析するため,ハイブリドーマ法により抗ヤギ赤血球MoAbを作製した.MoAbは,ヤギ赤血球で免疫したBALB/cマウス脾細胞とマウスミエローマ細胞(X 63.653またはNS-1)をpolyethylene glycolを用いて融合したハイブリドーマ細胞より得た.7回の細胞融合実験により,免疫抗原に対する抗体(凝集素あるいは溶血素)を産生するハイブリドーマ細胞が合計272株得られた.そのうち,凝集素産生細胞は15株(5.5%),溶血素産生細胞は257株(94.5%)であり,溶血素産生細胞が多数出現した.それらのMoAbの抗体クラスを寒天ゲル内二重免疫拡散法により分析したところ,すべてIgGもしくはIgMクラスに属していた.また,MoAbは腹水より回収することにより免疫抗原に対して平均15,919倍(IgG)ないし平均28,755倍(IgM)の力価を獲得することが可能であった.陽性ハイブリドーマ細胞のうち細胞増殖が良く培養上清中の蛋白質が高かった39株を選択し,その特異性を165例のヤギ赤血球を用いて調査したところ,同種抗原特異抗体が8種認められた.そのうちの一つはPoAb Gh 3と同一の反応を示したが,その他は既に得られていたいずれのPoAbとも異なった反応を示した.さらに,これ以外の31種のMoAbについて,ヤギ,ヒツジ,ウシ,スイギュウ,ブタおよびウマの6種の動物赤血球を用いて種属抗原の特異性を調査したところ,ヤギの赤血球抗原のみと反応する17種の抗体が得られた.以上,従来から赤血球抗原の分析に用いられているPoAbに比して,特異性,再現性および抗体力価の点で高い有効性を持つ抗ヤギ赤血球MoAbを,マウスハイブリドーマ法により作出することに成功した.

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