日本畜産学会報
Online ISSN : 1880-8255
Print ISSN : 1346-907X
ISSN-L : 1880-8255
ヒツジ赤血球におけるヘモグロビン型,NADH-ジアホラーゼ型並びに還元グルタチオン型とメトヘモグロビン代謝機構との関係
角田 健司嘉藤 弘子三枝 弘育島岡 達朗
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 57 巻 12 号 p. 971-977

詳細
抄録

赤血球には機能性ヘモグロビン(Hb)を保持するため,Hbの酸化防止機構やメトヘモグロビン(met Hb)環元機構が存在する.ヒッジ赤血球のこれらの機構に関与する物質のうち, HbおよびNADH-ジアホラーゼ(Dia)は電気泳動分析によりそれぞれA, AB, BおよびF, FS, Sの3型に,また還元型グルタチオン(GSH)は分光光度分析によりhighとlowの2型に分類される.今回はFinnish Landrace種を対象に,これらの生化学的多型とヘマトクリット(Ht)値,赤血球中のHb濃度,met Hb濃度, Dia活性値およびGSH濃度との関係を比較検討し,次の結果を得た.1) Hb型間におけるHt値はHb A型>Hb AB型>Hb B型の順で,Dia型でのそれはDia F型>Dia FS型>Dia S型の順であった. Hb A型とHb B型およびDia F型とDia S型の間におけるHt値にはそれぞれ有意な差が認められた(P<0.001,P<0.02).2つのGSH型間のHt値はGSH-high型の方がGSH-low型よりも高い傾向を示した.2) Hb型による赤血球中のmet Hb濃度では,HbA型はHbB型よりも統計的に有意に低く(P<0.001),Hb AB型はHb A型とHb B型との中間の値であった.Hb A型のDia活性値はHb B型のそれに比べ低い傾向が認められた.またGSH濃度ではHb A型>Hb AB型>Hb B型の順となり,特にHb A型とHb B型との間には有意な差がみられた(P<0.05).3) Dia型とそのDia活性値との関係では, Dia F型の酵素活性値がDia S型のそれに比べ有意に低かった(P<0.01).2つのDia型間におけるmet HbおよびGSHの濃度の比較では,Dis F型はDia S型に比べ, met Hb濃度は低く(P<0.01), GSH濃度は高い値であった(P<0.01).4) GSH型とmet Hb濃度およびDia活性値の関係については, GSH-high型の両形質はGSH-low型のそれに比べ共に有意に低い値を示した(P<0.01).

著者関連情報
© 社団法人日本畜産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top