日本畜産学会報
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ステロイド除去豚卵胞液の排卵前投与による家兎黄体機能の低下について
吉田 康則永濱 忍伊藤 祐子前田 照夫寺田 隆登堤 義雄奥田 潔住 延栄佐藤 邦忠
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1986 年 57 巻 12 号 p. 1010-1021

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抄録

活性炭処理豚卵胞液(CTPFF)4mlを成熟雌家兎に12時間おきに10回皮下注射し(処理),最終投与時に10 IUのhCGを静注して排卵を誘起した.偽妊娠4日目の黄体数は処理区(3羽)で対照区(生理的食塩水投与,6羽)より有意に減少したが,卵巣と黄体の平均重量には差はなく,大型卵胞数は処理区で減少していた.末梢血漿中のプロゲステロン(P)濃度は処理中対照に比しやや高レベルを示したが,排卵時の上昇,その後の急減は両区とも同様であり,偽妊娠4日目のPレベルは対照区の方が上昇していた.
処理後15 IUのhCG投与で排卵した6羽では,黄体数は対照区(7羽)より有意に少なく,偽妊娠7日目の卵巣と黄体の平均重量も有意に減少した.卵胞の大きさ別個数には差はなかった.P濃度では処理中および排卵翌日まで両区間に差はなかったが,偽妊娠3日目から7日目まで処理区は低い値を維持した.7日目の黄体組織には処理区で退行的徴候が認められた.
処理後15 IU(A区,7羽)または30 IU(B区,5羽)のhCGを投与し,偽妊娠10日目に検査したものでは,卵巣重量も黄体重量も両区間に差はなかった.しかし卵胞数ではB区で1.0~1.5mm大のものが非常に多く,2.0mm大のものが少なかった.P濃度は偽妊娠3日から10日目まで処理区で低値を示し,特にA区で著しかった.全体を通じ,1羽当りの総黄体重量とP濃度間に高い相関が認められた.
以上の結果より,卵胞期の家兎にCTPFFを連続投与すると,hCGによる排卵誘起後の黄体形成が抑制されるとともに排卵後7日の黄体機能が低下することが示唆された.

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