日本畜産学会報
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タローエステルがあん羊の第一胃内容液の泡沫形成に及ぼす影響
宇佐川 智也川島 良治
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1984 年 55 巻 6 号 p. 389-393

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抄録

泡沫性鼓脹症を抑制する方法を検討する一端として,タローエステル(TE)の泡沫性鼓脹症抑制効果をin vitroでの消泡効果から検討した.本試験に用いたTEは,ショ糖と牛脂とを,炭酸カリウムを触媒としてアルコール分解する方法によって調製された,粗製ショ糖牛脂脂肪酸エステルである.鼓脹症誘起飼料を給与しためん羊の第一胃内容液をin vitro培養の供試材料とし,TEを供試胃液に0.25%,0.5%,1.0%,2.0%それぞれ添加した区と無添加の対照区を設けた.その結果,TE添加により,2時間の培養における第一胃内容液のガス産生量が増加し,それに伴って,Ingesta VolumeIncrease (IVI)が大きくなる傾向を示した.しかし,第一胃内容液の泡沫安定度の指標となるStableIVIの値はTE添加により小さくなった(P<0.001).第一胃内容液のpH値はTE添加により高くなる傾向を示し,TE添加量が多くなるにつれて高くなる傾向を示した.第一胃内微生物を含まない状態での粘度はTE添加の影響を受けなかったが,微生物を含んだ第一胃内容液の粘度は,Stable IVIと同様にTE添加により低くなった.以上のように,TEはStable IVIの値を小さくすることから,安定した泡沫の形成を抑制する効果が期待でき,鼓脹症抑制効果のあることが示唆された.

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