日本畜産学会報
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屠殺前の温度処理が鶉浅胸筋の解糖速度と筋肉組織に与える影響
鈴木 敏郎鴨居 郁三鬼原 新之亟小原 哲二郎
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1981 年 52 巻 1 号 p. 26-32

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抄録

屠殺前の温度環境の違いによって豚などに見られるPSE (Pale, Soft, Exudative)肉等の異常肉が鶉においても発生するかどうかを知る目的で,屠殺前に4種の異なった温度環境に置いた鶉の浅胸筋を用いて,その解糖速度および筋肉組織状態を調べた.その結果,屠殺後の解糖は低温区(4°,2hr)および高→低温区(40°, 1hr→4°, 1hr)の鶉では,対照区(20°恒温)とほぼ同様に4~5時間で解糖は終了したが,高温区(400°, 1hr)においては屠殺後1~1.5時間で,グリコーゲン,ATPが急激に分解され,それに伴なって乳酸量が急激に増加し急速な解糖が起っていた.また,走査電子顕微鏡による組織観察においても高温区の筋線維は萎縮し,筋内膜からもはく離し明らかに異常な組織状態を示し,屠殺前に高温状態に置かれた鶉において異常肉が発生することが明らかになった.一方,低温区,高→低温区のものの組織状態は正常であった.このことより一度,高温状態に置かれた鶉でも屠殺前に低温に置くことにより,解糖速度および筋肉組織を正常に戻すことができることも明らかになった.

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