日本畜産学会報
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凍結マウス胚の生存性における系統差
宮本 元勝浦 五郎石橋 武彦
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1977 年 48 巻 11 号 p. 634-640

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抄録

凍結•融解されたマウス胚の生存性に系統差がみられるか否かを明らかにするため本実験を行った.過排卵処理により5系統のマウスから採取した8細胞卵を,リン酸緩衝液(PBS)またはTCM 199に浮遊させ,室温で0.5-1時間,一部は4.5-5時間静置した.DMSO添加後-79°Cに凍結し,融解後培養によって8細胞卵から膨張した胚盤胞に発生した胚を生存胚と判定した.えられた結果はつぎのとおりである.1. 室温下でPBSに0.5-1時間浮遊後に凍結したddN, ddY, ICR, C3HおよびC57BL/6胚の生存率はそれぞれ80.8,91.3,96.8,94.4および95.7%であり,ddN胚はその他の系統の胚より生存率が低い(P<0.05).TCM 199に浮遊させた場合にはそれぞれ70.7,94.3,92.7,81.6および88.1%であり,ddN胚はddY, ICRおよびC57BL/6胚よりも生存率が低く(P<0.01),C3H胚はddYおよびICR胚より生存率が低い(P<0.05).2. PBSまたはTCM199に0.5-1時間浮遊後に凍結すると,C3H胚においてはTCM199よりPBSの方が生存率が高いが(P<0.01),その他の系統では両者間に有意差は見られない.これに対して5系統の胚を合計して比較した場合には,PBSおよびTCM 199における生存率はそれぞれ91.7および86.3%であり,PBSの方が生存率が高い(P<0.02).3. ICR胚を凍結前に室温下で4.5-5時間浮遊すると,0.5-1時間浮遊したものに比べ凍結後の生存率が低下するが,その差は,有意ではない.

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