日本畜産学会報
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血清エステラーゼの多型現象とその育種学的研究
IV. マウスおよびラットにおける血清Cholinesterase isozymesの生理的変動とその性ホルモン支配
萬田 正治大木 与志雄西田 周作
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1971 年 42 巻 9 号 p. 442-450

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抄録

澱粉ゲル電気泳動法によって分離検出されたマウスおよびラットの血清cholinesterase isozymesの生理的調節機構を明らかにすることを目的として,幼若,成熟,妊娠,泌乳などの生理的変化における本酵素活性の変動を観察し,つぎに去勢ならびに種々の性ホルモン投与試験をおこない,その性ホルモン支配について検討を試みた.またこれらの血清酵素の臓器起源についても若干の検討をおこない,その発現機構について考察を加えた.
1. 血清cholinesterase isozymesの中でもマウスではC3 zoneの活性に顕著な雌雄差が認められ,成熟雌マウスは幼若マウスおよび成熟雄マウスよりも高い活性値を示した.C3 zoneの活性は妊娠とともに著しく上昇するが,分娩後はしだいに低下し,泌乳期の終わる頃には正常に戻った.ラットではC4 zoneに全く同様の明瞭な生理的変動が認められた.しかしマウスではC4 zone活性は上昇しないで,むしろわずかに低下する傾向が見られた.
2. 血清isozymesの主要成分であるC4 zoneと微量成分であるC1 zoneは,種々の主要臓器に認められたが,マウスの血清C3 zoneはいかなる主要臓器にも認めることができなかった.しかしながらC1 zoneが子宮と胎盤には高い活性値で存在し,特に妊娠期では著しく高くなることが観察された.
3. 成熟雌マウスの血清C3 zoneと成熟雌ラットの血清C4 zoneの活性は,卵巣除去によって減少したが,Estradiol benzoateを投与することによって正常に戻った.一方,成熟雄マウスの血清C3 zoneと成熟雄ラットの血清C4 zoneの活性は,精巣除去によって上昇したが,Testosterone propionateの投与によって正常に戻った.去勢雌マウスに対するProgesterone投与の効果は認められなかった.
4. 子宮において,マウスのC1 zoneおよびC4 zoneと,ラットのC4 zone活性もまた卵巣除去によって低下し,Estradiol benzoateの投与によって正常に戻った.以上のことから,マウスおよびラットにおけるcholinesterase isozymesの活性は,Estrogenによって促進されるが,Testosteroneによって抑制されることが示唆された.

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