2022 年 76 巻 3-4 号 p. 56-62
本研究の目的は,動物実験での嚥下機能評価を内視鏡検査を利用することにより低侵襲で同一個体での継続観察が行えるかを検討することである.嚥下機能評価にはピリジン誘発性咽頭炎モデルラットを用い,嚥下潜時および10秒間の嚥下回数をピリジン塗布前と塗布後,同一個体で3日間継続して計測した.嚥下反射時に内視鏡先端からの照射光がハレーションして内視鏡画像のホワイトアウトが引き起こされるため,この現象を嚥下の指標とした.ピリジン塗布により咽頭粘膜に上皮剥離,浮腫,好中球浸潤等の炎症所見が認められた.塗布1日後に有意な嚥下潜時の延長と嚥下回数の減少が認められ,2日目以降は回復した.摂食量および摂水量も塗布1日後に減少が認められた.内視鏡を用いることにより,ピリジン誘発性咽頭炎による嚥下機能の障害と回復過程を継続的に評価することが可能であったことから,本研究で用いた実験手法は新たな嚥下解析ツールとして有用であることが示された.