九州歯科学会雑誌
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終末期がん患者に対する口腔ケアが口腔関連QOLにおよぼす効果
高橋  由希子伊藤  恵美亀岡  祐一引地  尚子
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2016 年 70 巻 4 号 p. 101-113

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抄録

本研究の目的は,口腔ケアが終末期がん患者の口腔関連QOLにおよぼす効果について検討することである.  終末期がん患者20名に対し,口腔ケアによる介入を行い,介入前後で口腔内診査とQOL評価票2種を指標としてQOLを定量的に評価し,介入の効果を検討した.  口腔ケア介入前後のGeneral Oral Health Assessment Index(略称:GOHAI)の日本語版の尺度を用いた評価では有意差は認められなかった.しかしながら,口腔ケア介入前のGOHAIスコアと口腔ケア介入数との間には負の相関が認められたため,入院直後の口腔関連QOLが低値であるほど口腔ケア介入数が増加したことが示唆された.  また,口腔ケア介入前後のM. D. Anderson Symptom Inventory(M. Dアンダーソンセンター版症状評価票)の日本語版(略称:MDASI-J)支障スコアを比較検討すると,有意差が認められ,全身のQOLは低下していることが示された.その際,MDASI-J支障スコア変化量と口腔ケア介入回数との間に弱い正の相関が認められた.すなわち,口腔ケアの実施により,末期がんにおける全身QOLの低下を軽減する可能性が示された.  本研究より,口腔ケア介入前後1か月の期間において,終末期がん患者の全身状態の悪化が認められたものの,口腔ケアによる介入が,対象者の生活における前向きな気持ちや活動に対する意欲の維持に正の影響をおよぼすことを示した.

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© 2016 九州歯科学会
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