園芸学会雑誌
Online ISSN : 1880-358X
Print ISSN : 0013-7626
ISSN-L : 0013-7626
ウンシュウミカン (Citrus unshiu Marc.) 果皮のピロフェオフォルビド a 分解酵素
前田 義志足立 勝下川 敬之
著者情報
ジャーナル フリー

1999 年 68 巻 3 号 p. 661-668

詳細
抄録

ウンシュウミカン果実の果皮より調製した粗酵素液(APE)中に, ピロフェオフォルビドaを分解する酵素が存在することを明らかにした.本研究では, この酵素反応について, 次のことを明らかにした.この酵素反応には, H2O2とDCPが必要であること, 至適pHはリン酸カリウム緩衝液で6.2, 酢酸緩衝液で4.2であること, タンパク質量に対する反応量は直線的であること, ピロフェオフォルビドaに対するKm値はほぼ140μM, DCPに対してほぼ1.3mM, H2O2に対してほぼ45μMであることがわかった.この酵素反応は, アスコルビン酸, ヒドロキノン, プロピルガレート, チロン, シアン化カリウムにより阻害されることから, フリーラジカルが関与していることが明らかとなった.また, 反応液のUV-VISの差スペクトル変化において, 赤色領域のピークおよびソーレー帯のピークが同時に減少していることから, ピロフェオフォルビドaはクロロフィル-ポルフィリン環の開裂を起こし分解していくことが明らかとなった.さらに, 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)でピロフェオフォルビドaを同じ条件で分解させたところ, UV-VISの差スペクトルの変化は, ほぼ同じであった.このことから, APEとHRPによる分解がほぼ同じ反応によるものと推察した.また, フェオフォルビドaにも同条件で本酵素を作用させたが, 分解速度はピロフェオフォルビドaの分解速度よりも遅かった.さらに, HRPでもピロフェオフォルビドaとフェオフォルビドaを同条件で分解させたところ, 同様の結果が得られた.これらの結果より, ウンシュウミカン果実のピロフェオフォルビドa分解酵素はペルオキシダーゼのアイソザイムの1つであることが示唆された.

著者関連情報
© 園芸学会
前の記事 次の記事
feedback
Top