園芸学会雑誌
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ウンシュウミカン果実のクロロフィリドa分解酵素(クロロフィリドaペルオキシダーゼ) の精製と酵素化学的性質について
下川 敬之柳迫 睦内田 好則
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1992 年 61 巻 3 号 p. 665-673

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抄録

エチレン処理したウンシュウミカン果実の果皮から,クロロフィリドa分解酵素を, アセトン粉末抽出液,硫安分画, イオン交換クロマトグラフィー, およびゲルろ過クロマトグラフィーの4段階で, 比活性にして約1,000倍まで精製した. この酵素は, クロロフィリドa分解のため, H2O2と2,4•ジクロロフェノールあるいはP-クマール酸を必要とする. クロロフィリドaに対するKmは13.2μM, H2O2に対して18μM,2,4-ジクロロフェノールに対して13μMである.
この酵素反応は, ヒドロキノンによって強く阻害される. その他, 次のことがわかった. (1) チロン, シアン化カリウム, ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウムによって阻害されることから, フリーラジカルと金属が関与すること, (2) モノヨード酢酸ナトリウム, P-クロロマーキュリ安息香酸ナトリウム, およびN-エチルマレイミドによって阻害されないことから,SH基の関与はないこと, (3) ヒスチジン, マンノースによって阻害されないことから, ヒドロキシルラジカルは関係しないこと, (4) ジメチルフランとトリエチレンジアミンによって阻害が認められないことから,一重項酸素が関与しないこと.
この酵素の分子量は, セファクリルS-200によるゲルろ過クロマトグラフィーにより, 42,000±2,000と推定された. 以上の結果をもとにして, 本酵素がクロロフィリドaをより有効な基質とするペルオキシダーゼで, "クロロフィリドaオキシダーゼ"とよべるものであることを, その生体内における役割とともに考察した.

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