高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
Online ISSN : 1880-6554
Print ISSN : 1348-4818
ISSN-L : 1348-4818
原著
左半側空間無視患者における文章音読時の読み誤りと視線の動きについて─文の改行位置が与える影響─
川崎 美里阿部 晶子橋本 律夫
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 42 巻 4 号 p. 442-451

詳細
抄録

  本研究の目的は, 左半側空間無視 (以下, 左 USN) 患者を対象に, 横書き文の改行位置による左無視性失読 (以下, 左 ND) の出現率および眼球運動の差を明らかにすることである。対象は左 USN 患者 5 名と健常者 18 名であった。課題は横書き文章の音読課題を用いた。課題文は改行位置を統制し, 語頭から始まる行 (以下, 語頭条件) と語中から始まる行 (以下, 語中条件) が半数ずつになるようにした。 改行時の左 ND は 5 名中 3 名に認められた。左 USN 患者においては, 左 ND がみられるか否かにかかわらず, return sweep (改行時に行末から行頭に向かうサッケード) の終了位置が行頭よりも右側にとどまった。著明な左 ND がみられた 1 名では, 語中条件よりも語頭条件において行頭文字の読み落としが多く, 語中条件よりも語頭条件の最左停留位置 (視線が最も左方に達した位置) がより右側であった。

著者関連情報
© 2022 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
前の記事 次の記事
feedback
Top