2020 年 40 巻 3 号 p. 377-384
20~70 歳代の健常者 120 名を対象に, 年齢と高次脳機能の関係を明らかにするため, voxelbased morphometry (VBM) を用いて検討した。高次脳機能評価として ACE-R を施行し下位項目得点を算出した。3T MRI で撮像した解剖画像を使用した。加齢に有意に相関する因子は, 脳形態では灰白質容積 (負相関) と髄液容積 (正相関) , 高次脳機能では遅延再生得点 (負相関) であった。加齢に対する近似直線/ 曲線では 20 歳以降から灰白質の減少がはじまる一方, 遅延再生は緩やかな低下を示した。VBM 解析では, 遅延再生は両側の前頭葉, 側頭葉, 島回, 海馬付近, 楔部など広い領域で灰白質の減少と相関したが, 年齢を共変量とした条件では有意な相関を示す領域はなかった。最も加齢の影響を受けるのは遅延再生であり, 緩やかに低下し, 脳の広範な領域が関与していたが, 年齢の影響を除いた特異領域は本研究では同定できなかった。