高次脳機能研究 (旧 失語症研究)
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原著
バーチャルリアリティ課題を用いた extrapersonal neglect の評価
田村 正樹白川 真羅 志偉種村 留美
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2020 年 40 巻 3 号 p. 369-376

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抄録

  半側空間無視 (unilateral spatial neglect : USN) の評価では, 手の届く空間範囲内で出現する無視 (peripersonal neglect) に対して, BIT 行動性無視検査日本版 (Behavioural Inattention Test : BIT) を用いることが多い。しかしながら, 無視症状は机上検査と生活場面とで, その発現頻度に乖離が生じる場合があると報告されている (Azouvi ら 2003) 。その要因の一つとして, 身体からの距離または視角の違いが挙げられる。今回, 手の届く空間範囲外で出現する無視 (extrapersonal neglect) に対して, 筆者らは移動場面を模したバーチャルリアリティ (virtual reality : VR) 課題を開発した。VR 課題を用い, 70 歳代右利き女性で右視床出血後の USN 症例 1 名の無視症状について, 健常高齢者 11 名 (平均年齢 71.2 ± 4.0 歳, 男 3 名, 女性 8 名) と比較し, 検討した。USN 症例は BIT 通常検査と行動検査のそれぞれの合計得点が正常範囲内であったが, VR 課題では健常高齢群と比較し, 総得点の低下や見落とし数の増加, 頭頸部の平均回旋角度の右側偏倚等が認められた。

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© 2020 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
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