精密機械
Print ISSN : 0374-3543
ラップ加工面における砥粒残留機構の検討
Si単結晶のラッピング機構に関する研究(第3報)
池田 正幸
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1970 年 36 巻 430 号 p. 745-750

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抄録

EMX およびSEMを使ってラップ加工面に残留する砥粒の量を測定し,その存在機構を観察した.また,残留砥粒がラップ加工面の変質層深さに大きな影響を与えていることを実験結果から推論した.本実験で得られた主な結果をまとめるとっぎのようになる.
(1)Si単結晶のようなぜい性材料のラップ加工面では砥粒はクラックの間に弾性的に保持された形で残っている.残留している砥粒の大きさはラップ距離が長くなるにつれて次第に小さくなる.
(2)残留砥粒率はラップ圧力,ラップ距離によらずほぼ一定である.しかし,残留砥粒率の標準偏差はラップ距離が長くなるにっれて減少する.
(3)残留砥粒はきわめて短時間(少量)のエッチングを行なうことによってその大部分(80~90%)を除去することができる.
(4)摩耗したラップはきわめて小さい粒子となって加工面に移着していることが明らかとなった.その移着率はラップ距離が長くなるにつれて増加する.X線回折によると移着したラップの微粒子はSiと化学反応生成物を作っている可能性が認められる.
(5)残留砥粒はその存在機構から,クラックを強制的に拡げ,クラックの先端に応力集中を生じさせている.そのために加工変質層の大部分を占める弾性変形領域が厚くなっている.
本研究を行なうにあたって,種々ご指導と有益なご助言,実験結果の討論をしてくださった東芝総合研究所精密加工研究センター所長,小林昭博士,電気試験所電子加工部材料加工研究室長,今中治博士に厚くお礼申し上げます.

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