精密工学会誌
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短波長・短パルスレーザによる除去加工に関する研究
光熱モデルによる高分子材料加工のエネルギー収支計算
伊藤 慶子森安 雅治平本 誠剛大峯 恩川澄 博通
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1993 年 59 巻 3 号 p. 473-478

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抄録

紫外, 可視, 赤外各波長の短パルスレーザを用いてポリイミドの除去加工を行い, これらの現象が光熱作用に基づくものと仮定し, この熱により温度上昇が起こり除去が達成されるというモデルから数値解析を行ない, 照射実験との比較を行った.
その結果各波長のレーザによる除去加工のしきい値エネルギー密度はいずれも材料の気化開始温度と密接な関係があることや, 繰返し周波数を変えた場合の加工現象の違いは蓄熱作用を考慮した数値計算結果とよく一致することがわかった.これより短波長レーザにおいても, 波長毎に決まる材料の光吸収係数や比熱などの熱特性はレーザ加工特性を決定する重要な因子であることが推察される.
また短波長レーザ加工の低熱損傷性, パルスごとの制御における優位性は, 深さ方向の温度分布やパルス休止時間中の冷却から理解でき, 蓄熱作用が起こりにくいためパルスごとの除去量が一定で, 繰返し周波数の影響を受けにくいことがわかった.
本理論より除去における繰返し周波数の影響はレーザ波長や材料により異なることがわかるが, 数値計算よりYAG第4高調波によるポリイミドの加工では, 1000pps程度の高繰り返し照射でも蓄熱の影響がなく, 低熱損傷加工が可能であることが予測できる.

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