日本血栓止血学会誌
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特集 血管内皮細胞機能の最新知見
血管組織と血管内皮細胞の硬さとその役割
岡本 貴行
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2019 年 30 巻 3 号 p. 496-504

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抄録

要約:正常な血管は柔らかくしなやかであり,動脈硬化を起こした血管では伸縮性が低下して硬くなる.血管の弾性率(硬さ)は細胞外成分(細胞外マトリックスや蛋白など)や血管構成細胞の硬さによって決まる.動脈硬化病変では,コラーゲンの蓄積や線維化,カルシウム沈着による石灰化などにより血管組織が硬化する.血管内皮細胞は,この細胞外環境の硬さを一種の力学刺激として感知・応答して,細胞増殖など細胞機能を調節する.他方,原子間力顕微鏡などの発展により,動脈硬化病変の血管内皮や炎症時の血管内皮細胞は硬化することが明らかにされている.細胞の硬さは細胞骨格や細胞外環境,細胞間結合によって調節される.血管内皮細胞の機能維持に関わるギャップ結合は,血管内皮細胞の硬化を介して単球やマクロファージの接着を促進する可能性が考えられる.組織や細胞レベルでの硬さが血管病変形成に関与することが明らかになりつつある.

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© 2019 日本血栓止血学会
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