頭頚部領域は口腔,鼻腔から咽喉頭を含み,嚥下や呼吸,発声に重要な部位である.頭頚部のがん罹患は全体のわずか4.6%であるが,他領域と比べてがん治療によって嚥下が障害されやすい.根治治療には放射線療法や薬物療法,外科療法がある.放射線療法では治療中の粘膜炎,治療後の線維化によって嚥下障害が起こりやすい.また,薬物療法は放射線療法と併用すると,粘膜炎を増強させる.外科療法では腫瘍を含めて広範囲に切除する.その切除範囲によって術後の嚥下機能はまったく異なる.頭頚部がんでは治療法や治療部位によって生じる嚥下障害はさまざまであるため,病態に沿った対応やリハビリテーション治療が重要である.