2022 年 62 巻 5 号 p. 371-376
目的.日本では中皮腫以上の発症が推測されている石綿肺がんの労災保険制度の認定が少ない.その要因として診療体制における石綿ばく露の聴取調査が確立していないことが一因であると考えた.方法.肺がん治療の診療で石綿ばく露に関連する聴取調査を行っている医師に対してウェブアンケート調査を行い,診療体制の現状と課題を明らかにした.結果.医師が知っている石綿に関する情報は主に直接ばく露であり,患者への情報提供も同様であり,間接ばく露の可能性がある患者は診断されづらい状況が明らかになった.結論.医師には間接ばく露である石綿健康被害に関する学習,病院内の相談支援部門等との連携体制の構築が求められる.