肺癌
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症例
心筋転移をきたした肺腺癌の1例
村上 裕亮小山 孝彦加藤 良一
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 60 巻 2 号 p. 99-103

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抄録

背景.肺癌の心筋転移は稀である.今回我々は生前に心筋転移を診断し,osimertinibによる治療効果を得られたT790M変異陽性肺腺癌の症例を経験したので報告する.症例.66歳女性.右上葉肺腺癌に対して右上葉切除術を行った.病理検査で混合型腺癌(pT2aN2M0 pStage IIIA),EGFR遺伝子変異陽性と診断した.術後補助化学療法は希望されなかったが,術後4か月で縦隔リンパ節再発を認め,gefitinibによる治療を開始した.治療開始9か月後に新規頭蓋骨転移を認めたため,新規治療導入目的に入院した.入院時に下壁梗塞を疑う心電図変化を認めた.心臓超音波検査とCT検査で左室下壁から心室中隔に及ぶ腫瘤性病変を認め,肺癌の心筋転移と診断した.Osimertinibによる治療を開始し,4か月後には転移巣の縮小とともに心電図変化も消失した.Osimertinibを約9か月間継続し,心筋転移出現から13か月の生存が得られた.結論.急性心筋梗塞様の心電図変化により肺癌の心筋転移の診断を行い,osimertinibによる治療で心筋転移縮小および心電図異常変化の消失を認めた症例を経験した.

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© 2020 日本肺癌学会
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