2017 年 57 巻 2 号 p. 113-117
背景.乳癌術後20年で再発し,肺胞性パターンの画像所見を呈し,上皮成長因子受容体(EGFR:epidermal growth factor receptor)遺伝子変異陽性の乳癌肺転移症例は稀である.症例.62歳女性.咳嗽が続き近医を受診.胸部X線で両側中下肺野に浸潤影を認め,当科紹介となった.慢性感染症を疑い,気管支鏡検査を施行し,腺癌と診断された.EGFR遺伝子変異陽性であり,原発性肺癌の診断にてゲフィチニブで治療を開始するも,4週間後の画像所見は悪化していた.乳癌の既往があることから,再生検し,乳癌肺転移の診断となった.ホルモン療法開始後の画像所見で陰影の改善がみられ,現在も治療継続中である.結論.肺胞性パターンの画像所見を呈した,EGFR遺伝子変異陽性の乳癌肺転移の1例を経験した.画像上肺胞性パターンを来す画像所見の診断として,肺癌のみでなく,乳癌を含めた転移性肺腫瘍も考慮することが必要と考えた.また,乳癌は晩期再発の報告があるため,乳癌の既往のある場合には再発の可能性を考慮することが重要と考えた.