肺癌
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症例
胸腺癌に気管原発MALTリンパ腫を合併し化学療法により両者の改善を認めた1例
古澤 春彦大河内 稔高山 聡内堀 健富永 慎一郎夏目 一郎
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2012 年 52 巻 6 号 p. 919-924

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抄録

背景.気管・気管支mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫はまれであり,胸腺癌との合併例の報告はない.胸腺癌は,診断時すでに転移や局所進行を認めることが多く予後不良であり,確立された治療法はない.症例.68歳男性.急激な呼吸循環不全により当院受診.画像上,前縦隔腫瘍と多量の心嚢水貯留を認めた.心嚢ドレナージにて全身状態が改善した後,縦隔鏡を施行し病理所見にて胸腺癌,正岡分類IVaと診断した.一方気管支鏡では気管粘膜下に隆起性病変を認め,生検標本では粘膜下に小型リンパ球様の細胞を認めた.免疫染色ではB細胞マーカーが陽性を示し,遺伝子再構成陽性でありMALTリンパ腫と診断した.カルボプラチン,パクリタキセル併用療法を施行し,著明な腫瘍縮小効果が認められた.4コース化学療法施行後に気管支鏡を再検したところMALTリンパ腫はほぼ消失していた.結論.胸腺癌とMALTリンパ腫の合併した症例にカルボプラチンとパクリタキセル併用化学療法で治療し,双方に対し有効であった.MALTリンパ腫は長期間の炎症に続発するといわれており,他悪性疾患との合併も検討する必要がある.

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© 2012 日本肺癌学会
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