肺癌
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症例
4回の手術,放射線治療,化学療法により長期生存を得ている胸腺癌の1例
大塩 恭彦藤野 昇三澤井 聡大塩 麻友美朝倉 庄志一瀬 増太郎
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2007 年 47 巻 1 号 p. 41-46

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抄録

背景.胸腺癌において,転移を有する症例や再発症例では一般的に予後不良である.しかしながら中には集学的治療で長期生存を得られる症例もあり,積極的な治療が望まれる.症例.初診時51歳の女性.1990年の健診で胸部異常陰影を指摘され当科初診.前縦隔と肝臓に腫瘤影を認め,胸腺腫瘍を含む拡大胸腺摘出術および肝腫瘍に対し経皮的エタノール注入療法(PEIT)を施行した.病理所見で縦隔腫瘍は胸腺未分化癌,肝腫瘍は術中針生検で未分化癌の転移と診断された.縦隔リンパ節転移も認め,IV期であった.1991年10月,肝腫瘍の再増大に対して肝S8切除術を施行した(転移性未分化癌).1994年1月,肝再発に対して肝S4部分切除術を施行(転移性未分化癌),同年8月,右胸壁腫瘍切除術を施行し,病理診断は小細胞癌であった.1998年1月,右肺門部腫瘤に対して,化学療法(CDDP+VP-16)および放射線治療を施行しCRを得た.同年8月,右肺S10の腫瘤に対して化学療法(CBDCA+oral VP-16)を施行しCRを得た.2005年12月現在,右胸壁・横隔膜上に腫瘤影を認めるが,SDの状態であり無治療のまま経過をみている.結論.胸腺癌の中には集学的治療で長期生存が得られる症例があり,積極的な治療が望まれる.

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© 2007 日本肺癌学会
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