肺癌
Online ISSN : 1348-9992
Print ISSN : 0386-9628
ISSN-L : 0386-9628
症例
胸腺腫との鑑別が困難であったT細胞型リンパ芽球性リンパ腫の1例
大内 政嗣井上 修平花岡 淳五十嵐 知之藤野 昇三
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2007 年 47 巻 3 号 p. 277-283

詳細
抄録

背景.前縦隔には胸腺原性,上皮性,胚細胞性腫瘍やリンパ増殖性疾患など様々な腫瘍が発生する.なかでもリンパ球優位型胸腺腫とリンパ腫との鑑別には難渋することがある.症例.65歳の男性.胸部単純X線検査で前縦隔の腫瘤を指摘され当科に入院となった.胸部CT写真上,前縦隔から左胸腔側に突出する腫瘤がみられ,胸腺腫の疑いで胸腺全摘術を受けた.術後の病理組織学的検査で正岡分類I期,リンパ球優位型胸腺腫(WHO type B1)と診断された.手術から約1ヶ月後に胸腹水,全身リンパ節の腫大および脾腫が出現し,再入院した.左鼠径部のリンパ節生検でT細胞性リンパ芽球性リンパ腫と診断され,全身化学療法を受けたが,多臓器不全のため死亡した.結論.前縦隔腫瘍において,リンパ球優位型胸腺腫が考えられる場合には,早急に強力な化学療法を要するリンパ腫も考慮し,腫瘍の組織学的診断に加えて,迅速かつ正確な確定診断に努めるべきである.

著者関連情報
© 2007 日本肺癌学会
前の記事 次の記事
feedback
Top